03/26/2026 | Press release | Distributed by Public on 03/25/2026 15:48
先日、非常時に携帯事業者間で相互利用を行う「Japanローミング」の運用が始まりました。Japanローミングとは、フルローミング方式(主にMNO加入者が対象)の場合、SMSや音声通話、緊急通報に加え、300kbpsのデータ通信も提供されるとのことです。この仕組みは、被災により機能不全に陥った通信事業者の加入者を、他社の設備を使って救済する画期的な取り組みと言えます。
このような事業者を跨ぐ非常時の回線確保は、個人レベルの通信維持として素晴らしい一歩です。しかし一方で、個人回線に主眼を置いたこのJapanローミングの取り組みだけでは、社会インフラを支える組織、特に自治体等のICT-BCP(業務継続計画)対策としては必ずしも十分とは言えません。
官公庁や自治体は、各施設において極めて複雑なネットワーク設備を運用しており、これらが被災すると業務に甚大な混乱が生じます。自治体の業務が滞れば、罹災証明書の発行遅延による生活再建の停滞が起こったり、正確な被害状況の把握が困難になり支援のミスマッチが発生したりします。さらには、避難場所の情報共有や物資の配分、負傷者救済のための救急車両のディスパッチなど、住民の生命に直結する判断が下せなくなる恐れがあるのです。
施設内の主要なICT設備の多くは現在もLANケーブルによる有線配線が主流です。しかし、大規模地震が発生した場合、建物の歪みや什器の転倒によってケーブルが断線し、機器が不通になることは容易に予想されます。また、庁舎間を結ぶ基幹光ファイバーなどの幹線がダメージを受けた場合、建物全体、あるいは地域全体の通信が完全に孤立してしまうリスクもあります。BCPの根幹である情報収集・指示伝達を不可能にします。災害復旧の観点からも、物理的な制約を受けにくい通信環境の整備による復旧力の向上が急務です。
現在、総務省からも「地方公共団体におけるICT部門のBCP策定に関するガイドライン」(外部リンク/PDF)が示されています。そこでは災害時優先電話や優先通信の確保、データのバックアップなどが定義され、微に入り細を穿つ内容が網羅されています。しかし、「物理的な通信経路の冗長化」や「初動における即時復旧性」の具体策がまだ不足しており、災害に対して真に頑強なローカルネットワーク環境の「あるべき姿」について、より踏み込んだ指針が必要です。
災害対応の要は「初動」です。たとえ庁舎が壊滅的な被害を受けた場合でも、即座に最低限の業務システムへアクセスできる環境を整えておかねばなりません。そのための理想的なパッケージとして、以下の要素が挙げられます。
もちろん、災害を未然に防ぐ備えは最優先です。そのために、堤防のかさ上げや、建物の耐震補強・老朽化対策などが全国で進められていることと思います。
これらの設備をただ導入するだけでなく、定期的な非常時訓練(ブラインド訓練)を通じて習熟しておくことが、真の備えとなります。 日本は世界屈指の自然災害大国です。だからこそ、いざというときに迅速なBCPを実現できるICT網の構築は、日本スタンダードとして有事の際の「レジリエンス(復旧力)の模範」として、世界中から注目される取り組みになるはずです。
PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩
NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。