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01/06/2026 | Press release | Distributed by Public on 01/06/2026 22:01

「「技術がAIに追い抜かれた日」LINEヤフー研究所・岩崎が語る、AI時代の研究者の生き方とは?」を公開しました

「技術がAIに追い抜かれた日」LINEヤフー研究所・岩崎が語る、AI時代の研究者の生き方とは?

2026年1月6日 コーポレート

長年積み上げてきた技術が、ある日、AIにあっさりと追い越された──。

25年以上類似画像検索(※1)を研究し、2025年11月に黄綬褒章(※2)を受章したLINEヤフー研究所の岩崎は、この急激な変化をどう受け止め、どのようにAIと共に進化してきたのでしょうか。
「AIが技術を超える時代に、人はどう成長していけるのか?」
その答えには、研究者だけでなく、あらゆる人の働き方に通じるヒントがありました。

※1 類似画像検索:
人間が画像から感じるさまざまな観点を数値(特徴量)化し、その距離の近さから「似ている画像」を探す技術
※2 黄綬褒章:
長年にわたり「手を動かして技術を磨いた人」に贈られる国の表彰。職人や技能者が多く、研究者の受章は珍しい(褒章の種類及び授与対象

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岩崎 雅二郎(いわさき まさじろう)1989年日本電気株式会社入社。1990年株式会社リコー入社。全文検索、構造化文書データベース、画像検索の研究開発に従事。2007年ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)入社。画像認識・高次元ベクトルデータ検索の研究開発に従事。博士(工学)。

黄綬褒章を見せてもらいました...!

――昨年(2024年)の「現代の名工」に続き、黄綬褒章を受章してどのように感じましたか?

現代の名工の時も驚いたのですが、このような名誉ある黄綬褒章を頂けたことに、より驚いただけでなく、気が引き締まる思いでした。
というのも、通常は入れない皇居の豊明殿での拝謁(はいえつ)の儀式があったのです。このような厳粛な儀式に参加できたことを、本当に光栄に思っています。

技術は完全には死なない。でも「小さな終わり」はある

――「AIの進化で、技術が終わった瞬間を実感した」そうですね。

はい。ただ、「完全に死ぬ技術」って、実はそんなにないんです。AIもそうで、深層学習が今のブームですが、ニューラルネットワーク自体は昔からあって、盛り上がったり、沈んだりを繰り返してきました。
だから、技術が大きなストリームごと死ぬことはほぼない。でも、確かに「小さな終わり」は訪れます。

――小さな終わり、ですか?

はい。私は昔、全文検索を研究していたんですが、あるとき「あ、もうできちゃったな」と感じた瞬間がありました。

当時はインデックス(※3)をディスクに置く前提で、容量や速度の制約が多かったんです。
でも、メモリが安くなり「全部メモリに入れられる」世界が来た途端、それまで工夫してきた仕組みが一気に不要になってしまった

※3 インデックス:
たくさんの画像の「特徴(数字化された情報)」を並べてある「検索用のデータベース」のこと

――技術の前提が変わると「終わり」がくる。

そうです。前提が変わった瞬間、その技術が役目を終えるんです。

――では、25年以上研究されている類似画像検索では、どんな「終わり」があったのでしょう。

類似画像検索では、「特徴量」と「インデックス」を組み合わせて動いているのですが、私はその両方に長年携わってきました。

特徴量は、人から「こう見えているだろう」と想像しながら作るものでした。
たとえば「この黒い四角はテレビだろうか」「色の分布はどうか」「輪郭のエッジはどこか」と、ひとつひとつ人の認知をシミュレーションし、その画像の特徴を数値に落とし込んでいきます。

――最初は想像で、そして手作業だったんですね。

そうなんです。でも今はAIが、圧倒的に高精度な特徴量を一瞬で出してくれます。私たちが何年もかけて少しずつ改善してきたものを、いきなり飛び越えた。

「あ、これは人が作る特徴量はもう終わったな」と思いました。

――じゃあ、もう岩崎さんが特徴量をつくる必要は...?

まったくないです。AIが出す特徴量って、人間の想像なんて全然及ばないんですよ。めちゃくちゃ精度が高い。

――それがわかったとき、ショックでしたか?

意外とネガティブではなかったですね。若手が頑張ってくれていたAIのモデルづくりにも関わっていたので、「自分が育てた子どもに抜かれた」ような、どこかうれしい気持ちもあったんです。

そして、20年前に「ECで人間の感覚と同等の類似画像検索を実現したい」と思っていた夢が、今はAIによって当時の想像を超える形で実現している。それは研究者として本当にうれしい経験でした。

――画像処理領域でも、大きな変化があったのでしょうか。

ありました。セグメンテーション(※4)なんて、昔は本当に大変だったんですよ。
人には簡単な「どこが商品で、どこが背景か」を判断させるのに苦労して、何度も調整して。

でも今はAIに学習させれば一発です。「あ、ここが商品ね」ってすぐわかる。
画像処理の多くは、AIに置き換わったと言えると思います。
本当に恐ろしいですよ、このスピード感。

※4 セグメンテーション:
画像内の「どこが物体で、どこが背景か」を切り分ける技術

AIは脅威ではなく研究を広げる「相棒」

――最近は、どんなふうにAIを使っていますか?

ちょうど良い事例があって。私の専門のベクトル近傍検索には、世界中の研究者が性能を競うベンチマークがあるんです。そこで一度ほぼトップを取ったんですが、3~4年前に他の研究者に追い抜かれてしまい、すごく悔しくて...。

相手のツールが、私のツールを改良していることがわかったので「どう改良したんだろう?」と思ったんですが、自分で調べると...1年はかかる。AIがなければ多分諦めていたでしょうね。

でもAIに任せてみたら、1カ月で全体像がつかめたんです。実験的な確認も含めて、研究のスピードが桁違いに速くなった。「これは本当に研究のパートナーになるな」と感じましたね。

――AI、優秀ですね!

優秀です。ただ、ウソもつきます(笑)。
「これは素晴らしい発見です!」とか言ってくるけど全然違ったりする。確認作業は必須ですね。

でも、「AIに作業させて、AIにチェックさせる」という使い方ができてくると、本当に頼れる相棒になります。

――「AIの出力内容やチェック結果が正しいかどうか」を確認するなど、人には今までとは違うスキルが求められている気がします。

大事なのは、AIへの「頼み方」です。
AIって技術分野や作業によってかなり頼み方が違ってくると思うので、どう頼むのが最適なのか、実際に使ってみないとわからないんです。そこがAIを使うスキルとなるのだと思います。

自分の専門分野と、あまり詳しくない分野でAIを使ってみると、感覚が全然違うんです。特に専門分野では、AIの出力の「粗」がすぐに見えてしまうので、それを減らすための指示をいかにうまく出せるかが重要なスキルになってきます。
そのように自分の専門分野で利用することで、AIを高度に使うスキルを習得していくことが重要だと思っています。

そして一番大事なのは、AIを信じすぎないこと(笑)。
自分の専門分野なら自分でチェックできますけど、自分の専門外の領域では、「本当にそう?」「別の見方でどう?」「もう一回やってみて」とか、何度か投げるんです。

そうすると「すみません、さっきの間違ってました」って平気で言ってくる...あれがね...ちょっと頭にくるんですよね...。

――(笑)

最初は私も丁寧に「~してもらえますか?」と言っていたんですよ。
でもだんだん「これやって」「次これ」みたいに命令形になっちゃって...。
一度だけ、もう本気でイラッとして「やれ!」と強めに言ってしまったこともあります(笑)

――AIに対しては圧が強い...! でも、最近は「AIに対しては少し高圧的に接した方が正しい回答を返してくる」っていう研究もあるそうですよ。

参考)チャットGPTは上から目線の失礼な話し方をすると賢くなるという研究結果

そうなんですね。でも、そのときはちょっと反省しました(笑)

AIに任せると、人は「上のレイヤー」に移動できる

――私たちがAIと一緒に成長するために、何が必要なのでしょうか?

まず「AIへの指示の出し方」を学ぶことですね。
ソフトウェアの世界で言うと、AIは「優秀なプログラマー」みたいな存在です。指示すれば何でも高速にこなすけど、どう作るかの設計方針的なところは人間が決めてやる必要がある。

――なるほど。

たとえば、AさんとBさんというSEが同じシステムを作っても、出来上がるものって結構違うと思うんです。持っているノウハウが違うし、性格も違うから。
それをAIに教え込めば、Aさんと同じ意思決定ができるAI、Bさんと同じ意思決定できるAIができる。

そしてAIがその人の分身のように仕事をこなしてくれるようになれば、本人はもっと上の工程、たとえば設計や上位の意思決定のほうに進めるようになる、というイメージですね。

――AIに自分の考え方を教えて、次のステップへ。

はい。AIを使わないでいると、そのレイヤーにずっととどまってAIと「同じ土俵」で戦うことになるんですよ。そうなると、もう人はAIには勝てない

でもAIを使う側に回れば、人は自然と「上のレイヤー」に移れるんです。
さっきの例で言うと、プログラミングをAIに任せて判断、方針、目標づくりのフェーズに進むことができる。

――AIの下でも横でもなく「上に立つ」、という発想が今までなかったです。

スキルとして持っていなかった領域に手を伸ばしやすくなった。つまり、AIでスキルの幅を広げる使い方ができます。
また、自分がやっていた仕事をAIに任せれば任せるほど、人は戦略や方向性の判断といった「上の仕事」に進めます。もちろん、AIを使うスキルを持った上で進むことが重要です。

今の私の仕事だと、プログラミングや実験はAIに任せて改良のアイデア出しに集中できるようになっています。
AIと競うんじゃなくて、AIに押し上げてもらいながら一緒に成長する
今はそういう働き方が求められていると思っていますし、私はそういう意識でAIと向き合っています。

ただ...その結果、人間の働き方は(AIを相手に)どんどんマネジメント寄りになっていくのかもしれませんね。
自分で手を動かしてプログラミングすることも、これからはどんどんなくなっていく気がします。好きで続けてきた仕事が減っていくのは、少し寂しいですけどね。

AIが終わるとしたら...それは人間が終わるとき?

――これから、AIと一緒に研究をどう進めていきたいですか?

AIを使うようになっても、基本はあまり変わらないですね。やりたい改良はまだまだたくさんあります。
ただ、「ここ高速化して」と一言頼んで、完璧な答えがポンと出てくる...という段階には、まだないです。現時点でのAIはそこまで魔法じゃない。

でも、「こういうアイデアがあるんだけど、どう思う?」という相談はできるようになりましたし、試すのも本当に早くなった。研究開発のスピードは正直「怖いくらい」速くなっています
ソフトウェア業界の伸びもすごいですが、研究の世界でも同じことが起きていて。今のAIは、本当に面白いですよ。

――岩崎さんはこれまでも、多くの技術の進化を体験されてきましたよね。

私がコンピューターを初めて触ったのが高校生のときなんですけど、友だちの家に行って触らせてもらって、それがもう楽しくてしょうがなくて!

あれからパソコン、Windows、インターネット、スマホの登場...いろいろな技術の大きな変革を経験してきましたけど、AIはその全部を越える衝撃です。

――では、AIの技術は「終わらない」と思いますか?

それ、ちょっと考えていました。もしAIが終わるとしたら、その時は人間がすでに終わっているときじゃないかなと

人間の脳を作り上げようとしているわけだから、その先には人間を超える存在が現れるかもしれない。そんな極端な未来もあり得るかもしれませんね。

――未来が楽しみなような、こわいような...。最後に、AIとの付き合い方に悩む人へのメッセージをお願いします。

「AIにどんどん任せて大丈夫」です。
むしろできるかぎり任せることでAIとの付き合い方を学び、一緒に成長しなければならない。そうしないと、AIと同じ土俵で競うことになってしまいます。そこでは、人は勝ちようがありません。

だから、もっと上のレイヤーに移る。判断する側、ゴールをつくる側に回る。
AIに仕事を奪われるんじゃなくて、AIに今までとは違うスキルを押し上げてもらう。それがAI時代の働き方だと思います。

AIは、人間が長い時間かけて育ててきた多くの技術を一気に越えてしまったかもしれません。でも、そのAIと共存しようとする人間側も、また成長できるんです。

技術はいつか終わる。でも終わりの先に、必ず違う技術やスキルが生まれる
私たちはその連続の中で進化してきました。AIの時代も、それは同じです。

これからもAIと一緒に、次の「技術の山」を登るのが、本当に楽しみですね。

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取材日:2025年11月27日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:倉増 崇史
※本記事の内容は取材日時点のものです

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