University of Tokyo

05/11/2026 | Press release | Distributed by Public on 05/11/2026 22:04

能登半島沖で津波の原因となる大規模構造を発見 ―令和6年能登半島地震(...

2026年5月11日

東京大学
海洋研究開発機構
中央大学

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発表のポイント

◆能登半島地震(M7.6)の発生域で高分解能の地震波探査を行い、海底に広がる「大規模変形帯」を発見しました。この構造を取り入れた数値シミュレーションにより、津波の発生に深く関係していた可能性が高いことが分かりました。
◆地震波探査と数値シミュレーションを組み合わせることで、津波を引き起こした可能性の高い海底活断層を初めて具体的に示しました。
◆今後、この構造の性質や過去の活動履歴を解明することで、地震・津波防災への貢献が期待されます。

大規模変形帯の構造を取り入れた津波シミュレーションの結果

発表内容

東京大学大気海洋研究所の朴進午准教授らの研究グループは、令和6年能登半島地震(M7.6)の発生域において高分解能の地震波探査(注1 )を実施し、その結果を津波伝播シミュレーションに反映しました。その結果、地震発生域に広く分布する大規模変形帯が津波発生に深く関与した可能性が高いことを明らかにしました。

(1)研究の背景
2024年1月1日、能登半島でマグニチュード7.6の大地震が発生し、石川県を中心に大きな被害が生じました(図1)。この地震では津波も発生し、沿岸部に深刻な影響を与えました。これまでの研究から、震源となった断層は能登半島北西部から北東沖にかけて延びる長さ約150kmの構造と考えられています。しかし、多くの海底活断層のうち、どの断層が津波発生に関与したのかは明らかになっていませんでした。

図1:能登半島沖の海底地形と大規模変形帯の分布

地震波探査の測線(薄い灰色)上に、大規模変形帯(赤太線)の位置を示す。余震分布(ピンク色点)や既存の断層モデル(黒実線または黒点線の四角)、地震前後の海底隆起域(黄色ポリゴン)も併せて表示。

(2)研究の成果
本研究グループは2024年3月、学術研究船「白鳳丸」による緊急調査を実施し、能登半島北東沖で高分解能の地震波探査を行いました。その結果、地震発生域の海底下に、複数の断層や地層の変形が集中する「大規模変形帯(Large Deformation Zone, LDZ)」が広く分布していることを初めて明らかにしました(図1、図2)。この変形帯は、①幅:約2.5~3.8km、②長さ:約30km、③北東―南西方向に分布、という特徴を持ち、急な傾きを持つ逆断層と、その周囲に広がる複雑な断層群から構成されています。また、海底地形データから、この構造が過去から現在に至るまで繰り返し活動してきた可能性が高いことも分かりました。さらに、地震前後の比較で確認された海底の隆起域とも一致しており、今回の地震と密接に関係していると考えられます。

図2:大規模変形帯の地下構造(測線K1)

地震波探査により得られた断面図と海底地形から、断層や地層の変形の様子を示す。(a)構造解釈なしの地震波探査断面図。(b)P波速度モデルを重ねた地震波探査断面図に構造解釈を加えた図。上段には海底地形を示す。大規模変形帯(LDZ)を赤点線で示す。

この構造が津波に与えた影響を調べるため、観測データに基づいた数値シミュレーションを行いました(図3)。その結果、大規模変形帯に関連する断層が6~7メートル程度すべることで、実際に観測された津波の高さを最もよく再現できることが分かりました。この値は先行研究よりも大きく、大規模変形帯の存在が津波発生に大きく影響したことを示しています。

図3:津波シミュレーションの結果

(a)海岸線に沿って計算された津波の高さ(赤線)と観測データ(黒三角と黒丸)を比較し、モデルの妥当性を示す。(b)海岸線距離と震源断層モデル。(c)計算された最大津波高

(3)研究の意義と今後の展望
本研究により、能登半島地震の発生域において、津波の発生に関わる新たな海底構造が明らかになりました。この「大規模変形帯」は、長い地質時代にわたり活動してきた重要な構造である可能性があります。今後は、①断層の力学的な性質、②地下の流体との関係、③過去の活動履歴などを詳しく調べることで、地震や津波の発生メカニズムの理解がさらに進むと期待されます。また、このような構造は日本海側の他の地域にも存在する可能性があり、全国的な防災対策の高度化にもつながる重要な成果です。

〇関連情報:
「プレスリリース:令和6年能登半島地震に伴う学術研究船「白鳳丸」 緊急調査航海(第三次)の実施について ―共同利用研究航海:地震発生域の海洋地球科学総合調査―」(2024/3/1)
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2024/20240301.html

発表者・研究者等情報

東京大学大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 海洋地球科学部門
朴 進午 准教授
モハマディヘイマシ ハムゼ 特任研究員
山口 飛鳥 准教授
沖野 郷子 教授

海洋研究開発機構 地震火山研究部門
地球内部観測センター
藤江 剛 センター長
地球モニタリングセンター
今井 健太郎 グループリーダー

株式会社ジオサイエンス
ジャマリホンドリ エッサン 部長

中央大学
理工学術院
有川 太郎 教授
大学院理工学研究科
栗原 朋也 大学院生(博士前期課程、研究当時)

論文情報

雑誌名:Scientific Reports
題 名:Tsunamigenic fault structures revealed in the 2024 Noto earthquake (M7.6) rupture area
著者名:Jin-Oh Park, Hamzeh Mohammadigheymasi, Asuka Yamaguchi, Kyoko Okino, Gou Fujie, Ehsan Jamali Hondori, Taro Arikawa, Tomoya Kurihara, Kentaro Imai
DOI: 10.1038/s41598-026-48075-4
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-026-48075-4

研究助成

本研究は、科研費・基盤研究(S)「令和6年能登半島地震(M7.6)で津波を引き起こした海底活断層の実態解明(課題番号:25H00393, 25K24686)」、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の支援により実施されました。

用語解説

(注1)地震波探査 海水面の近くで人工的に放出させた振動(弾性波)が下方に進行し、速度と密度が変化する海底下地層境界面で反射して、再び海水面へ戻ってきた反射波を受振器(ハイドロフォン)で捉え、 収録された記録を処理・解析することにより、海底下の地殻構造と物性を解明する手法である。

問合せ先

東京大学大気海洋研究所 海洋地球システム研究系 海洋地球科学部門
准教授 朴 進午(ぱく じんお)
E-mail:joparkaori.u-tokyo.ac.jp ※アドレスの「◎」は「@」に変換してください

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