10/08/2025 | Press release | Distributed by Public on 10/08/2025 08:05
第3章:産業政策:成長と強靭性の促進に向けたトレードオフの管理
各国は、戦略的な部門や企業を支援することで自国経済の再編を図るべく、産業政策をますます活用するようになっている。その動機としては、生産性の向上や、とりわけエネルギー分野における輸入依存の低減、あるいは強靭性の強化などがある。産業政策は国内産業を活性化させる助けになりうるが、その効果は各産業固有の特性によって左右され、それを予め特定することは難しい。さらに、産業政策はトレードオフを伴う。ある戦略的部門で生産の国内回帰を進めれば、長期間にわたる消費者物価の上昇につながる可能性がある。そして、債務が高水準にあり、財政制約がある時には、産業政策の財政コストが相当なものになりかねない。産業レベルの成果が良好だとしても、産業政策は部門横断的な負の波及効果を生み、対象外の部門から非効率的な形で資源を引き離すことにより全体的な生産性を押し下げる恐れがある。産業政策が効果を上げるためには、慎重な対象設定と実施、強力な制度、補完的な構造改革、健全なマクロ経済政策が必要となる。