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10/22/2026 | Press release | Archived content

「「会議室では、答えが出すぎる」――AI時代に、私たちが里山に向かった理由」を公開しました

「会議室では、答えが出すぎる」――AI時代に、私たちが里山に向かった理由

2026年10月22日 サービス

企業での研修というと、会議室で行うワークショップを思い浮かべる人が多いかもしれません。ですが今年の夏、LINEヤフーのニュースサービスに関わるプロダクトオーナー・プロジェクトリーダーたち8名が研修に向かった先は、関東近郊の里山でした。

午前は里山を歩き、鳥獣被害の現場を見て、イノシシの解体を体験。午後は、実際に見聞きしたことをもとに「人と動物の共存」について考え、議論しました。

AIを使えば、情報を集め、整理し、それらしい答えを得ることもできる時代に、なぜわざわざ現場で体験研修を行ったのでしょうか? この一日を通して、参加者たちが何を感じ、どんな学びが生まれたのかをご紹介します。

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関東近郊の里山で過ごした一日

2026年8月、舞台となったのは関東近郊の里山です。

当日は「チェックイン」といって、事前に共有された地域の人口構成、獣害被害額、行政の予算状況、猟友会の年齢構成などの断片的なデータだけを材料に、「自分なら何を問いにするか」「どの論点が気になるか」をそれぞれ考えたことを話しました。
チェックイン後にハンタートレイルへ向かう予定でしたが、「今朝罠にかかったイノシシがいる」との連絡が地元猟友会より入り、急遽予定を変更して仕留めの現場を見学することになりました。

※研修のために捕獲したものではなく、通常の有害鳥獣捕獲の現場に、急遽立ち会わせていただきました。

命と被害の現場を、自分の目で確かめる

急遽、仕留めの見学から始まり、参加者は心の準備ができないまま、いきなりリアルな現場に直面することになりました。
衝撃のスタートと言っても過言ではなく、まだその現実を受け止めきれないままに解体の工程へ移りました。さっきまで罠にかかりながらも動き回っていたイノシシを洗浄し、解体を進めていきます。

「命をいただく」とはどういうことかを、言葉ではなくしっかりとした手触りのある体験をもって、自分事として受け止めていきました。

解体現場

乾いた銃声とともにイノシシが倒れた瞬間の衝撃は、言葉を失うほど強烈でした。
日頃、きれいに記号化された食材や、画面上のデータばかりを見ている私たちにとって、野生の命が「肉」へと変わり、自らの糧となる一連の体験は、五感を激しく揺さぶるものでした。

さらに、猟友会の方の「ただ駆除すればいいわけではない」「担い手も減り、生活と自然の境界線が崩れつつある」という生の声は重く、鳥獣被害が単なる地方の環境問題ではなく、生活、経済、倫理が絡み合った深刻で地続きの人間社会の課題であることを、痛烈なリアリティとともに突きつけられました。
(メディア・検索ドメイン ニュース プロダクトオーナー)

里山で見つかった、野生生物の骨と思われる痕跡

解体の後は、ハンタートレイルを実施しました。実際に里山へ入り、獣道や動物の痕跡をたどりながら歩くことで、現場の空気や地形、距離感を体で受け取っていきます。資料で読むだけでは、「鳥獣被害」や「共存」という言葉はどうしても抽象的になりがちです。
でも、現場に立つと、被害が起こる場所のリアルさや、人が管理し続ける難しさ、野生動物との距離感が一気に具体化します。午前の体験を経て、参加者の中では、課題を「知っている」状態から、「自分の感覚で捉え始める」状態へと変化が起きていました。

ハンタートレイルで案内をしてくださった猟友会の森雅宏さん

その後のジビエランチでは、午前中に得た感覚を持ったまま食事の時間へ移ります。
この日は、すでに調理用に処理されていたジビエをいただきましたが、「捕獲し、仕留め、解体し、食べる」という一連の流れが地続きであることを体感したうえで食卓につきました。
いただいたお料理はどれも独特なクセなどなく食べやすいものばかり。特に鹿肉のシチューは、ほろほろと柔らかく、参加者たちは半日を振り返りながらジビエ料理に舌鼓を打ちました。

この「頭で理解する」だけではない感覚が、午後のワークに厚みを与えていくことになりました。

鹿のシチュー

正解のないテーマに向き合う

午後は町内の施設へ移動し、「人と動物の共存」をテーマにグループワークを行いました。

  1. 「共存」とはどういう状態かを言葉にする
  2. ステークホルダーを洗い出す
  3. 関係性と利害を整理する
  4. 課題を見立てる
  5. 目的を定める
  6. 具体的なアクションを考える
  7. 結論を言葉にする

猟友会の中でもベテラン猟師の武井正和さん

最初に考えたのは、そもそも「共存」とはどんな状態なのか、ということです。

農作物を守りたい農家、対策を進める自治体、鳥獣を捕獲する猟友会、地域住民、都市で暮らす消費者、そして野生動物。それぞれの立場から考えていくと、「共存」の意味も1つではありません。

午前中に現場を歩き、猟友会の話を聞き、イノシシの仕留めや解体を目の前で見た参加者たち。そこで得た情報や実感を持ち寄りながら、「誰にとって、何が課題なのか」「何を目指すのか」を話し合いました。
自分たちの目で見た一次情報に触れたからこそ議論が立体的になり、普段より深いディスカッションが生まれたことも、この研修の大きな価値と言えそうです。

参加前は「人間と動物がうまく棲み分け、共存するための技術的・効率的な対策があるはずだ」と、どこか平面的に捉えていました。ですが当日の実体験と議論を経て、これが「バシッと一発で決められるような簡単な問題ではない」ということを痛感しました。

論点は極めて複合的であり、ステークホルダーが非常に多く、それぞれの「正義」や「利害」が複雑に絡み合っています。安易な二項対立で割り切ることはできず、何かを立てれば何かが立たなくなる、解決策そのものが新たな痛みを伴う極めて難解な構造である、と見方が変わりました。
(メディア・検索ドメイン ニュース プロダクトオーナー)

この学びを仕事にどう持ち帰るか

今回の研修に参加した、LINEヤフーのニュースサービスに関わるプロダクトオーナー・プロジェクトリーダーたちの仕事は、膨大な情報の中から何を拾い、誰にどんな価値として届けるのかを考え続ける仕事でもあります。ユーザーにとって何が必要か、社会的な影響をどう見るか、事業性や運用との両立をどう図るか。日々の意思決定は、複数の立場や制約の間で成り立っています。

参加者からは、今回の体験が、単に社会課題を知る機会ではなく、ニュース事業そのものを見つめ直す時間になったという声もありました。

私たちニュース事業では、単に事実を横流しにすることではなく、「ユーザーに社会課題の解決や次の行動につながるニュースを伝えること」を目指しています。

今回の鳥獣被害もまさにその典型的な社会問題です。オフィスを離れ、仕事仲間と答えのない社会課題について、一次情報に触れ、それぞれの価値観や視点をぶつけ合い白熱した議論ができたことは、エキサイティングな体験でした。チームビルディングという意味でも非常に効果があったように思います。

また、我々自身が一次情報に触れ、問題の複雑さを体感したからこそ、物事を多角的な観点から捉える目を持てたと感じています。
今後は、世の中の複雑な社会課題に対して安易なわかりやすさだけで切り取らず、多様なステークホルダーの視点や構造の奥深さをていねいにつむぎ、読者が主体的に考え、一歩を踏み出せるような「行動に繋がるニュースプラットフォーム」の設計に、この学びを強く活かしていきたいと考えています。
(メディア・検索ドメイン ニュース プロダクトオーナー)

なぜこの研修をあえて現地で行ったのか

ここまで読むと、この研修は「里山での特別な体験」を軸にしたプログラムのように見えるかもしれません。ですが、本質はそこではありません。狙っていたのは、AI時代にこそ必要になる、「問いを立てる力」「構造化する力」「決断を引き受ける力」を、会議室の外で鍛えることでした。

今回のフィールドワークを企画したのは、LINEヤフーのメディア事業推進にて組織開発に携わる小山です。ライフワークとして狩猟免許を取得し、猟友会にも所属する中で、鳥獣被害という社会課題を研修の題材にできないかと考え、今回のプログラムを設計しました。背景には、組織づくりの現場と社会課題の現場、その両方に接してきた小山ならではの視点がありました。

小山 壮士(こやま そうし)/メディアSBU メディア事業推進ディビジョン

会議室では、答えが出すぎるんです。
鳥獣被害について調べれば、AIも検索もすぐに「原因」や「対策」を教えてくれます。資料を読んでディスカッションすれば、それなりに筋のいい結論も出せると思います。

でも、実際に山に入ると、動物の痕跡がある。農作物を守りたい人がいる。一方で、目の前には生きていた動物がいて、それを解体し、最後には自分たちが食べる。
そうすると、さっきまで簡単に言えていた「駆除すればいい」「共存すべきだ」という言葉が、急に簡単には言えなくなるんです。

この研修でつくりたかったのは、知識が増える瞬間ではなく、自分の「正しさ」が一度揺らぐ瞬間でした。
AI時代だからこそ、きれいな答えを早く出すことよりも、答えを出す前に、一度自分の前提を疑えることが大事だと思っています。
そして、この研修で持ち帰ってほしいのは、答えではなく違和感です。仕事では、どうしても早く答えを出すことが求められ、AIによってそれはさらに加速していくと思います。
でも、今回のような複雑なテーマに向き合うと、「そもそもこの問いでいいのか」「誰にとっての正解なのか」「見えていないものはないか」と、一度立ち止まらざるを得ません。

目の前のもっともらしい答えをそのまま受け取るのではなく、自分たちの前提を疑い、異なる立場を踏まえたうえで、最後は自分たちで決める。そして、「なぜその答えを選んだのか」を自分たちの言葉で説明できること。その感覚が普段の仕事にもつながればいいなと思います。

また、同じような体験はすぐにできなくても、「あまのじゃくに考えてみる」というのは、日常でも使えるんじゃないかなと思っています。
何かを見て「これはこうだろう」と思ったときに、あえて一度だけ、逆から考えてみる。
「本当にそうなの?」「むしろ逆だったら?」「この考え方で一番困るのは誰?」と、自分の答えにちょっと意地悪な質問をしてみる。
大事なのは、反対意見を採用することではありません。自分の中では当たり前になっている前提を、一度ぐらつかせること。今回の現場でも、「共存すべき」「駆除すべき」と簡単に言えなくなったところから、ようやく本当の議論が始まりました。

AIが答えをすぐに出してくれる時代だからこそ、あまのじゃくになって、自分の答えに自分でツッコミを入れてみる。それくらいの余白が、これからの時代の意思決定には必要なんじゃないかなと思います。

取材日:2026年8月28日
文・撮影:安田 美紀
※本記事の内容は取材日時点のものです

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