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05/07/2026 | Press release | Distributed by Public on 05/06/2026 20:51

「なぜ今、高校生に「データ」が必要なのか──学校と企業が本気で向き合った探究学習の現場」を公開しました

なぜ今、高校生に「データ」が必要なのか──学校と企業が本気で向き合った探究学習の現場

2026年5月7日 コーポレート

「この勉強、将来何の役に立つんだろう?」
そんな疑問を持ったことはないでしょうか。

今、学校では、「答えのある問題」を解くのではなく、「正解のない問い」に向き合う探究学習が広がっています。
茨城県立下妻第一高等学校では、LINEヤフーのビッグデータを活用し、地域課題に挑む探究プログラムを実施。高校生がデータを読み解き、地域の未来について考えました。
なぜ今、高校生にデータ活用が必要なのでしょうか。そして、学校と企業が協働することで、どんな学びが生まれるのでしょうか?
下妻第一高等学校の生井校長先生とLINEヤフー担当者の対談から、その答えをひもときます。

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生井 秀一(なまい しゅういち)さん 茨城県立下妻第一高等学校 校長
大学卒業後、花王に入社し、営業・マーケティング・EC事業・DX推進など幅広い領域を経験。ヘアケアブランドの事業成長や全社DX推進をリードし、最年少部長として組織を率いた実績を持つ。2023年、民間人校長公募に応募し、1,600人超の中から選出され下妻第一高校副校長に就任。2024年より同校校長。企業で培ったマーケティング思考やデータ活用を教育に取り入れ、アントレプレナーシップ教育や探究学習の推進に取り組んでいる。
水上 哲也(みずかみ てつや) サステナビリティ推進CBU CSR推進ディビジョン
2004年に旧ヤフーへ入社。現在はIT人材育成プロジェクトでデータおよびテクノロジー領域の教育プログラム開発を担当。高等学校におけるビッグデータ利活用支援のほか、ビッグデータの分析、利活用を体験するワークショップイベントなどを通じ、未来世代のデジタルリテラシー向上に取り組んでいる。
笹崎 隆行(ささざき たかゆき) コマースドメイン リユースSBU マーケティング2ユニット フリマ販促ディビジョン
2018年に旧ヤフーへ入社。現在はコマースサービス(ヤフーフリマ、ヤフーオークションなど)を担うリユースSBUでフリマ販促企画を担当。兼務のCSR推進では水上とともに未来世代のデータリテラシー向上に取り組んでいる。

「学びと社会のねじれ」を解消するために

――まず、この取り組みがどのように始まったのか教えてください。

生井校長から「会社見学をしたい」というお話をいただいたのがきっかけでした。ただ当時は受け入れが難しく、一度はお断りしてしまったんです。
その後、社内の別部署を通じて偶然つながりが生まれ、「一度話してみよう」ということになりました。会社見学自体は実現できなかったのですが、「せっかくのご縁なので、何か一緒にできたら」という話になり、当時私が関わっていたデータリテラシー教育の取り組みをご紹介しました。
そこで、LINEヤフーのビッグデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を活用して、探究学習に生かしてみてはどうか、というアイデアが出たんです。

生井校長も「ぜひやりたい」と言ってくださり、そこからは一気に話が進みました。まずは1年間、ツールを活用しながら、私たちが伴走する形で探究学習を支援する取り組みをスタートしました。その後、「継続してやりたい」と言っていただいて、現在は3年目に入ったところです。

――生井校長が、今回LINEヤフーに声をかけてくださった背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

花王に在籍していた頃、私はDX部門の立ち上げに関わり、全社員向けにデータ活用の研修を行っていました。その中で、実際に社員に勧めていたのが「DS.INSIGHT」のようなデータ分析ツールです。
そうした経験から、「同じようなことが学校でもできるのではないか」と考えるようになりました。社会に出ると、データをもとに考え、説明する力が求められますよね。でも学校では、そうした力が学びと結びついている実感を持ちにくい。

「勉強が社会で役に立たない」と感じてしまう、「学びと社会のねじれ」を解消したい――それが、私が教育の現場に入った理由でもあります。
だからこそ、生徒たちにも早い段階でデータに触れてもらい、「こういう考え方が社会で生きる」という実感を持ってほしい。その思いから、LINEヤフーのデータ活用の取り組みに可能性を感じ、お声がけさせていただきました。

――先生が、社会に出たときにデータは必要だ、と強く感じるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

やはり、仕事の中で「人を動かす」経験を重ねたからですね。論理的に説明できないと、プロジェクトは前に進まないし、仲間も集まりません。
「とりあえずやってみよう」という感覚だけでは限界があって、やはり根拠となるデータや事実が必要になります。

さらに、今はいわゆる「データの民主化」が進んでいて、誰もがデータに触れられる時代です。ただし、データを扱うこと自体が目的ではなく、「何のために使うのか」が重要です。目的を達成するための手段として、データを活用する力は欠かせないスキルだと感じています。
だからこそ、中高生のうちから少しでも触れて、「こういう考え方があるんだ」と興味・関心を持ってもらうことが大切だと思っています。

探究学習は「調べて終わり」ではない

――具体的にこの取り組みはどのように進めていったのでしょうか。

今回の取り組みの背景として、文部科学省が進めている「DXハイスクール」の取り組み(※)があります。教育現場でもデジタル活用が強く求められるようになってきた中で、LINEヤフーとしてどのような貢献ができるかを考えました。

その中で着目したのが、私たちが日々扱っているビッグデータです。サービスの中で活用しているデータも、見方を変えれば高校生にとっては新しい学びの入り口になります。「データって面白い」と感じてもらうことが、その先の学びや進路にもつながるのではないかと考え、教育プログラムとして展開してきました。
今回の取り組みでは、下妻第一高校ですでに行われている探究活動の中にデータ活用を組み込む形で進めています。

※1 総合的な学習(探究)の時間(文部科学省)

本校では、複数の企業と連携した「コンソーシアム型」の探究学習を行っています。花王やメディア企業など、さまざまな企業にそれぞれの強みを生かして関わっていただく形です。

この背景には、探究学習の現場が抱える課題がありました。3年ほど前までは、多くの学校で「調べ学習」や「テスト対策」にとどまってしまい、本来の探究的な学びが実践できていなかったんです。教員自身も経験がなく、どう進めればよいか分からないという状況でした。

そこで、企業と協働しながらゼミ形式の授業を構築し、9つのテーマに分かれて探究を進める仕組みをつくりました。
LINEヤフーさんには、その中でデータ分析と地域課題を掛け合わせる役割を担っていただいています。

――ちなみに、「探究学習」と「調べ学習」はどのように違うのでしょうか?

そして、探究学習ではポスター発表などを通して、自分の考えを他者に伝える機会も設けています。ただ調べて終わるのではなく、「なぜこのテーマを選んだのか」「どんな結論に至ったのか」を自分の言葉で説明する。そのプロセスの中で、自分の得意なことや興味に気づいていくことができます。
正解が一つではないからこそ難しさもありますが、自分が納得できる答えを見つけていくことが、探究の大きな価値だと思います。

文部科学省も、探究学習を通じて「非認知能力」を育てることを重視しています。これはテストでは測れない力、たとえばコミュニケーション能力や課題設定力、論理的思考力などです。
実際、社会に出ると、学力だけで評価されるわけではありません。自分で課題を見つけ、考え、周囲と協働しながら解決していくことが求められます。

さらに、これからの時代は、何が正解か分からない状況の中で、自分なりの答えを見つけていく力が求められます。
いわゆるVUCA(※2)の時代で、いい会社に入れば安泰、という時代ではなくなっています。実際、変化が激しい現代において、従来の「正解を覚える学び」だけでは対応しきれない場面も増えているのではないでしょうか。

だからこそ、課題を自分で見つけ、考え、行動し、周囲を巻き込みながら形にしていく力が重要になります。探究学習では、そうしたプロセスを実際に体験しながら、「生き抜く力」を育てていくことができると考えています。

※2 VUCA:
「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取ったもの。「VUCA(ブーカ)時代」などと言われ、予測が困難で変化が激しい時代を指す言葉。

教えるのではなく、伴走する

――データを活用して、たとえばどのような分析を進めたのでしょうか。

1年生向けの地域課題に取り組むプログラムの中にデータ活用を組み込む形で、より体系的にお二人に関わっていただきました。
実際にデータを使ってみると、地域に対する新しい見方が生まれました。たとえば「下妻」と検索すると、関連ワードとして意外なイメージが見えてきたりする。それをもとに、「この地域はどう見られているのか」という視点で考えることができます。

たとえば、「笠間焼」をテーマにしたチームでは、共起ワードの中に「猫」というキーワードが多く含まれていることに気づいた生徒がいました。
そこから「なぜ猫なのか」を調べていくと、笠間焼には猫モチーフの作品に一定のニーズがあることに気づいたんです。
そうしたデータから得られるヒントをもとに、自分たちの仮説を深め、発表に落とし込んでいく。データはあくまできっかけですが、その気づきが探究を一段深める役割を果たしていました。

他には下妻の商店街をテーマにしたチームがあったのですが、「商店街」とそのまま検索しても、なかなかデータが出てこないという場面がありました。そこで、「下妻」を外して「商店街」で検索している人はどんな人なのかを見てみよう、という視点を提案しました。

すると、商店街に関心を持っている人の中には、男性は活性化の施策などを調べる傾向がある一方で、女性は「レトロ」「エモい」といったキーワードで、訪れる場所として関心を持っていることが見えてきたんです。

こうした違いが分かると、「誰に向けて、どんな価値を提案するのか」という視点が一気に具体的になります。データを通して、新しい切り口に気づき、そしてデータを根拠にすることで、自信を持ってアイデアを形にしていくことができるようになっていきました。

私がこの取り組みで大切にしているのは、学校の中だけで完結させず、外の視点を取り入れることです。

最終発表では、企業の方や外部の専門家に審査員として参加していただき、生徒たちの発表に対してさまざまな視点からフィードバックいただく機会を設けています。学校の授業ではなかなか得られない多様な意見に触れることができるのは大きな価値だと思います。
こうした経験を通じて、生徒たちは自分たちの考えをより客観的に見つめ直し、さらに深めていくことができるようになっていきます。

企業と学校がともに育てる未来

――では、探究的な学びを始めるために、どんなことを意識すればよいでしょうか? 周りの大人ができることはありますか?

大人ができることで一番大切なのは、「否定しないこと」だと思います。
先ほどもお話しましたが、探究には正解がありません。やり方も一つではないし、その時点でのベストが後から変わることもある。だからこそ、「それは違う」と最初から否定してしまうと、そこで思考が止まってしまうんです。

否定せずに受け止めることで、そこから新しい発想が生まれたり、考えが深まったりしていく。そうやって試行錯誤を続けていくこと自体が、探究の面白さだと思います。

もう一つ大切なのは、「なぜそう思ったのか」を掘り下げていくことです。
最初は思いつきに見えるアイデアでも、その背景をていねいにたどっていくと、そこにしっかりとした理由や関心があることが多いんです。その「なぜ」を言語化していくことで、アイデアはより強いものになっていくと思います。

あとは、難しく考えすぎずに、まずは小さく始めてみることですね。たとえば、身近な人に話を聞いてみる、気になったことを調べてみる、そういった小さな一歩からでも十分に探究は始められます。

そして大人も含めて大切なのは、「一緒に学ぶ姿勢」です。これまでの経験や立場にとらわれず、生徒と同じ目線で考え、学んでいく。探究学習は、子どもだけでなく、大人も成長できる機会だと思います。

――最後に、企業が探究学習に関わる意義、目指していることを教えてください。

生徒にとっては、企業が関わることで実社会に近い視点や考え方を知り、将来の選択肢を広げられることが大きな価値だと思います。企業と関わることで「こんな仕事もあるんだ」と知る機会にもなります。

一方で企業にとっても、これからの社会を担う若い世代が、何に関心を持ち、どのように考えているのかを知る貴重な機会になります。将来の人材との接点を持つという意味でも、大きな意義があるのではないでしょうか。

これからの時代は、国や企業の枠を越えて競争が激しくなっていきます。その中で、日本の企業が持つ強み、たとえばきめ細かさや人に寄り添う姿勢を、次の世代と一緒に大切にしていきたいと考えています。
学校としても、そうした価値観をもう一度見つめ直しながら、これからもさまざまな企業と連携し、社会とつながる学びを広げていきたいですね。

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取材日:2026年4月15日
文:LINEヤフーストーリー編集部 撮影:日比谷 好信
※本記事の内容は取材日時点のものです

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LY Corporation published this content on May 07, 2026, and is solely responsible for the information contained herein. Distributed via Public Technologies (PUBT), unedited and unaltered, on May 07, 2026 at 02:51 UTC. If you believe the information included in the content is inaccurate or outdated and requires editing or removal, please contact us at [email protected]