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08/04/2026 | Press release | Archived content

田中貴金属工業、高い硫黄耐性とメタン排出80%以上除去を両立するメタン酸化触媒「MOC1-30」シリーズを開発

ガスエンジン用途で1,000時間後も触媒機能を維持し、温室効果ガス排出低減とコスト最適化を両立する新触媒の開発に成功。使用後の触媒は、貴金属リサイクルにも対応。

2026年8月4日

田中貴金属の産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業株式会社は、硫黄(S)耐久性に優れ、長期間にわたり高い浄化性能を維持するメタン酸化触媒「MOC1-30」シリーズ(以下、「MOC1-30」)を開発したことを発表します。

本製品は、天然ガスや都市ガスなどの気体燃料を使用して動力を生成するガスエンジンにおける排ガス中のメタン(CH4)の除去用途としての活用が期待されます。メタンは、二酸化炭素(CO2)の約25倍の温室効果を持ち、削減が全世界的に急務となっています。本製品は、従来課題であった硫黄による触媒劣化を改善し、入口ガス温度350℃の環境下で1,000時間連続運転後もメタン除去率80%以上を維持するメタン酸化触媒です。

■開発の背景

近年、天然ガスを燃料とする発電設備や船舶の普及に伴い、排出されるメタンの削減が世界的な課題となっています。メタンはCO2に比べて温室効果が高く、気候変動対策の観点から国際的にも排出削減の機運が高まっており、排出規制の強化とともにその処理技術の高度化が求められています。

一方で、液化天然ガス(LNG)由来のガスや付臭剤(※1)には硫黄成分が含まれる場合が多く、従来のメタン酸化触媒では、硫黄の影響により触媒活性が低下するという課題がありました。さらに、高温環境下では触媒反応の元となる白金(Pt)粒子の肥大化(粗大化)が進行し、触媒性能が低下することも知られています。また、一般的には脱硫装置によって硫黄成分を除去する方法が採用されていますが、完全に除去することは難しく、微量の硫黄でも触媒劣化の要因となることが課題となっていました。

このため、硫黄存在下および高温環境下においても触媒性能の低下を抑制し、安定して性能を維持できるメタン酸化触媒の開発が求められていました。

■本製品における開発技術の特長

田中貴金属が開発したメタン酸化触媒「MOC1-30」は、独自技術により、触媒表面に吸着した硫黄を三酸化硫黄(SO3)として脱離させる機能と、Pt粒子と担体との結合を維持する機能を有しています。これにより、硫黄による反応阻害およびPt粒子の肥大化を抑制し、触媒性能の低下を防ぐことで、長期間にわたり安定した触媒活性を維持します。

また、田中貴金属は、原料の調達から材料開発、製造、販売、リサイクルまでを一貫して行う体制を有しており、本製品は使用後の貴金属リサイクルにも対応しています。貴金属前駆体の設計をはじめとする素材開発から触媒製品の開発・製造までを一貫して手がける独自の強みを活かし、環境負荷低減と資源循環の両立に貢献する本製品をグローバル市場に展開します。

■性能評価結果

本製品における触媒の性能評価では、窒素(N2)ガス中にメタン2,000ppm、酸素(O2)10%、二酸化硫黄(SO2)1ppmを含むモデルガス条件(SV(※2) 25,000h-1、セル数 100セル、入口ガス温度 350℃)において、1,000時間の連続反応後もメタン転化率(※3)80%以上を維持することを確認しました。また、二酸化硫黄3ppmを含むモデルガス条件(SV 100,000h-1、セル数 400セル、入口ガス温度 400℃)においても、100時間の連続反応後に約90%の高いメタン転化率を維持することが確認できています。さらに、従来のPt系触媒およびパラジウム(Pd)系触媒との比較評価においても優れた耐久性能を示し、従来触媒を大きく上回る結果を確認しています。

これらの結果から、「MOC1-30」は優れた硫黄耐久性とメタン浄化性能を有し、船舶用ガスエンジンや定置型ガスエンジンなどの用途において、排出されるメタンの削減に寄与する触媒として期待されます。

■導入効果と今後の展開

本製品の導入により、メタン排出規制への対応が見込めるほか、触媒の長寿命化による交換頻度の低減を通じて、運用コストの削減にも寄与します。さらに、従来必要とされていた脱硫プロセスの負荷軽減につながる可能性があり、システム全体の効率化にも貢献します。本製品は環境性能と経済性の両立が期待されることに加えて、使用後の触媒は回収・再資源化が可能であり、サステナブルな資源循環にも寄与します。

現在、船舶動力や非常用発電、データセンター向け分散電源など、ガスエンジンの活躍領域は拡大しています。これに伴い、排出されるメタンの削減に向けた投資需要の増加も見込まれています。「MOC1-30」は、成長するガスエンジン市場において、カーボンニュートラル社会の実現に寄与する有力な製品として、温室効果ガス排出の低減とコスト最適化の双方に貢献します。

田中貴金属は、貴金属の特性を活かした各種触媒の開発を長年にわたり推進し、排ガス浄化やエネルギー分野など幅広い領域に製品を提供しています。近年はカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発にも注力しており、本製品もその一環として開発されました。また、創業以来培ってきた地金調達から技術開発、製造、販売、そして貴金属リサイクルまでを担う一貫体制を強みに、産業界の脱炭素化と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(※1)付臭剤:ガス漏れを察知するために添加されるにおい成分。
(※2)SV:Space Velocity(空間速度)を指す。単位時間あたりに、触媒層体積の何倍のガスが流れるかを表す指標。
(※3)メタン転化率:触媒による化学反応によって、メタン成分の何%が別の物質に変化(転化)したかを示す指標。
この数値が100%に近いほど、未燃焼のまま大気中に放出されるメタンが除去できていることを示す。

20260804_田中貴金属工業、高い硫黄耐性とメタン排出80%以上除去を両立するメタン酸化触媒「MOC1-30」シリーズを開発.pdf

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