09/16/2025 | Press release | Distributed by Public on 09/15/2025 20:01
株式会社本田技術研究所(代表取締役社長:大津 啓司 以下、Honda)は、自動車廃材特有の固体異物を含有したELV※1由来の廃プラスチック部品から、資源となるプラスチックを選別して抽出する、固体異物分離技術「ケミカルソーティング」を新たに開発しました。2026年中に、最大処理能力350トン/年規模のパイロット設備の導入と実証を行い、2029年頃の実用化を目指します。
今回Hondaが開発した固体異物分離技術は、溶媒で樹脂を溶かして「固体異物」を除去するケミカルソーティングにより、高純度の樹脂を抽出するものです。一般的に自動車から出る廃プラスチック部品には、インサート金属※2、ゴムホース、パッキンおよび樹脂に含有されるガラス繊維をはじめとする補強材などの、プラスチックとは異なる固体異物が含まれています。これまでは、固体異物が付帯した廃プラスチック部品をリサイクルするには、人の手や機械により物理的に選別を行う「フィジカルソーティング」を用いることが一般的でしたが、分別の工程に伴うコスト上昇などさまざまな課題がありました。
ケミカルソーティングにより、これまで80%程度にとどまっていた固体異物分離率が99%以上に改善され、高純度のプラスチックを抽出できるようになりました。本技術から抽出された純度99%以上の高純度プラスチックは、メカニカルリサイクル・ケミカルリサイクルなどの再資源化工程を経て、再び自動車用材料として使用する「水平リサイクル」が可能となります。
従来の分離手法は、対象とする異物のサイズごとにフィルターや工程の仕様を最適化する必要がありました。廃プラスチック部品にはさまざまな大きさの異物がありますが、異物の大きさを予想できないため、フィルターの目を細かく設定する必要があり、すぐに目詰まりを起こして処理作業が止まっていました
自動車部品に使われるプラスチックは複数の樹脂、添加剤、充填材や付属部品が混在しており、これらを効率よく分離することが困難でした
多くの異物を集めるために目の細かいフィルターを用いると、数時間に1回は目詰まりに伴うフィルター交換の必要があります。そのため研究レベルでのリサイクルは可能でも、大量の廃材を安定的に処理できる連続プロセスとして成立させることが技術的に困難でした
リサイクルのためには産業界全体での取り組みが不可欠ですが、これまでは十分な連携体制が整っていませんでした
ミリメートルサイズの粗大異物に対しては目詰まりの少ない目の粗いフィルターを用い、マイクロメートル※3サイズの微小異物に対しては遠心分離機による物理的分離を適用することで、従来は異物のサイズごとに必要だった除去フィルターの仕様の調整が不要となり、微小異物から粗大異物まで一貫して除去可能としたこと。これによりメンテナンスやフィルター交換を最小限化し、産業スケールで安定的に運用できる連続プロセスを構築したこと。この2点により、HondaはELV由来廃プラスチックのリサイクルにおいてさまざまなサイズの異物除去に対応できるようになり、リサイクル可能な対象部品が増えたことで、経済合理性と展開性を両立させて実用化につなげました。また、Hondaは再資源化技術に長年取り組んでおり、その知見と技術基盤、社外のパートナーとの協力体制の進展が、今回の開発を支えました。
Hondaはモビリティを進化させるために注力するキーファクターのひとつとして、リソースサーキュレーションを掲げており、本技術はエンジニアリングプラスチックを中心とした他の素材への応用が期待できます。今後もリサイクルに関する研究を進め、サステナブルマテリアル100%での製品開発にチャレンジしていきます。
使用済み自動車(End-of-Life Vehicle)
プラスチック製品やゴム製品などの成形品の中にあらかじめ埋め込まれる金属部品
1マイクロメートル=0.001ミリメートル
投入した原材料の量に対して、どれだけ良品ができたかの割合。ここでは良品として獲得できた樹脂の量を、廃材原資の投入量で割った数値を指す
プラスチックの成形に使用される原料。3~5ミリメートル程度の小さな固まりの形状