01/06/2025 | Press release | Distributed by Public on 01/05/2025 19:42
当社社長COO石井敬太による社員向け「2025年年頭挨拶」につき下記の通りお知らせいたします。
記
皆さん、明けましておめでとうございます。
新しい年のスタートにあたり、全世界で活躍する伊藤忠グループの皆さんにご挨拶を申し上げたいと思います。
初めに、私は昨年、日本商工会議所の経済ミッションに同行し、久しぶりにタイのバンコク市内を回りましたが、円安の進行と日本企業の存在感の低下に驚きました。私がタイに駐在していた10年前は1バーツが2.8円程度でしたが、今は4.5円と大幅なバーツ高となっています。当時から日本人駐在員に人気のあったフカヒレスープの値段は現地では変わらず1,000バーツでしたが、円換算では10年前は約3,000円だったものが今は約5,000円であり、割高感を感じると同時に、非常に残念な気持ちになりました。また、かつて私が社外取締役を務めていたアマタ工業団地を訪問した際には、以前は日系の製造業や建設業で埋め尽くされていた工業団地が今や中国企業の進出の方が勝っており、日本企業の国際的な地位や競争力の低下に危機感を覚えました。
これまで、日本のアセアンにおける存在感は、製造業を中心に拡大してきましたが、やはりこれまでの延長のプロダクトアウト型のアプローチでは限界があると改めて感じました。通貨の価値は国力を表しているとも言われ、円安は単なる金利差だけに起因したものではなく、国力の相対的評価の結果だとすれば、大変悔しい状況であり、トップ総合商社である我々としても、日本復活の為に頑張らなければならないと改めて思った次第です。
さて、世界情勢に話を移します。昨年は世界各地で「選挙イヤー」となり、日本では石破政権が誕生、アメリカではトランプ氏が大統領選挙に勝利しました。いよいよ今年から始まるトランプ新政権の政策、特に貿易関税政策、対中規制の強化、移民問題などについては、既にマスコミやインターネット記事等で報道されている通り、これまでの政策から大きく転換することが予想されます。とりわけ、「トランプ2.0」では、米国第一主義を掲げ、輸入関税の引き上げ等により自国産業を保護する、保護主義的な動きを強めると見られています。また、強い絶対的リーダーが率いる中国、ロシア、トルコのほか、欧州ではフランスやドイツ等で右翼系政党が勢力を拡大するなど、世界全体で協調型から保守・保護主義的な志向に変わりつつある状況です。
このような中で、トランプ新大統領は多国間での協調・調整型ではなく、二国間での個別の握りを重視したディール型の交渉を展開していくと考えられ、各国・各地域がこれに対してどのようなアクションを取っていくのか、また、それに応じて現行の原材料・製品のサプライチェーンがどのように変容していくのかを、まずはしっかり注視していく必要があります。一方、トランプ新大統領の任期は4年であり、中長期のビジネスや投資などについては、「トランプ2.0」の政策に過剰に反応せず、本質を考える冷静な視点も必要だと思っています。今まで以上にしっかりアンテナを張り、神経を研ぎ澄ませ、お客様や対面業界の変化・転換を捉えることを心掛けて頂きたいと思います。
そしてもう一つ、ここで触れておきたいことは、生成AIを中心とするデジタル技術が加速度的に進化を遂げているとともに、実ビジネスへの導入も急速に進んでいるということです。現在、個人の生成AI利用率は、中国56%、アメリカ46%に対して日本は9%、また、ビジネスで生成AIを活用している利用率は世界平均43%に対して日本は16%と、我が国におけるAIの活用状況はまさに後進国レベルと言った状況です。デジタル後進国である日本ではあまり実感が湧かないかもしれませんが、世界では既に生成AIは大きなムーブメントであり、無視できないものとなっています。今後は、宇宙開発、ロボット、先端医療、スマートアグリといった先端分野だけでなく、既存分野においてもデジタルやAIを組み込んでいないものは、世界市場から脱落する可能性すらあります。最近では、「AIは今から2、3年以内に人間とほぼ同一の知能レベルを持つようになり、10年以内にはそのレベルの約1万倍を遥かに凌ぐ超知性が現れる」とも言われており、その進化は止まることを知りません。当社も急いでこの潮流に追いついていかなければ、次の新たなビジネスのきっかけすら掴めなくなるかもしれないと思っています。
このような状況の中、当社では、昨年11月に全社員・役員を対象に生成AIに関する研修を実施、また、12月からはマイクロソフトのCopilotも正式導入されるなど、普段のビジネスにおける生成AIの活用環境を急速に整えており、当社独自の生成AIサービスである「I-Colleague」の利用者は約1,000人まで拡大しました。「AIなんて使わなくても仕事はできる」、「AI活用は若手の仕事」と決めつけていませんか?あなたの隣で同僚が生成AIを使いこなし、仕事の効率を劇的に上げているかもしれません。「AIに仕事を奪われるのではない、AIを活用する人に仕事を奪われるのだ」とも言われる中、商人たるもの、世の中で起きている事象に常に注意を払い、観察し、吸収すべきものは吸収するという貪欲さを持ち合わせて欲しいと思っています。AI技術は、世界との距離と時間を縮め、生産性を高める必須のビジネスツールになりつつあります。このような新しい技術にもっと興味を持って頂き、日々の仕事の進化に役立ててもらいたいと思います。
最後に、2024年度の連結純利益計画8,800億円の必達とともに、伊藤忠グループの更なる活躍と商売繁盛、そして世界で活躍する伊藤忠グループの社員とそのご家族のご健康とご多幸を祈念し、私からの新年の挨拶とさせて頂きます。