06/01/2025 | Press release | Archived content
インド・ニューデリー(2025年6月1日)-アジア開発銀行(ADB)の神田眞人総裁は、インド全域における都市インフラの変革を支援する5カ年のイニシアティブを発表した。地下鉄網の拡張、地域高速輸送システム(RRTS)の新設、都市インフラおよび公共サービスを含む都市変革事業に対し、第三者資本を含め最大100億ドルを投入する。
神田総裁は、インドのナレンドラ・モディ首相との会談後、「都市は成長の原動力である」とした上で、「ADBは、資金の動員、事業の迅速な実施、そして都市経済の発展と人々の繁栄を支えるソリューションの拡充を通じて、インド政府が掲げる国家ビジョン『Viksit Bharat @ 2047』の実現を後押ししていく」と述べた。
本イニシアティブは、ソブリン融資、民間セクター向けファイナンス、および第三者資本の活用を含む。その中核をなすのは、インドの旗艦プログラムである「都市チャレンジ基金(Urban Challenge Fund:UCF)」であり、ADBは当基金を、都市インフラへの民間投資を促進するために支援している。すでに、国内100都市における成長拠点、創造都市の再開発、水・衛生分野の改善に関する分析が完了しており、UCFの基盤作りに役立っている。ADBはまた、資金供与可能(バンカブル)なプロジェクトの形成および州政府・地方自治体の能力強化のための技術支援に300万ドルを拠出する方針である。
インドの都市部人口は、2030年までに国内人口の40%を超える見込みである。ADBはすでに、22州における110以上の都市と連携し、水供給、衛生、住宅、廃棄物管理に関するプロジェクトを実施しており、現行の都市分野事業の貸付ポートフォリオは、27件、総額51億5,000万ドルにのぼる。都市交通分野では、ADBは過去10年間で、8都市で300kmにおよぶ地下鉄およびRRTSプロジェクトに対し、総額40億ドルを拠出してきた。対象事業には、デリー・メーラトRRTS、ムンバイ・メトロ、ナグプール・メトロ、チェンナイ・メトロ、ベンガルール・メトロが含まれ、渋滞の緩和や排出ガスの削減が図られるとともに、障害者を含む脆弱な人々の交通アクセスの拡大にも貢献している。
ADBはまた、製造業の振興、民間セクターの成長促進、および特にインドの若年層に対する質の高い雇用創出を目的として、国家産業訓練機関高度化プログラムを通じた技能開発に投資を行う。
神田総裁は訪問中、ニルマラ・シタラマン財務大臣と会談し、公共交通指向型都市開発(TOD)を含む地下鉄網の拡充、農村開発の支援、屋上太陽光発電の規模拡大、UCFの運用開始について協議した。また、マノハール・ラル住宅・都市大臣とも面会し、民間資本の都市プロジェクトへの活用や、ADBが支援する都市交通の成功事例の新たな回廊への展開、さらにTODの機会創出について、今後の方策を協議した。
神田総裁は、インド初のRRTSで、ADBが支援するデリー・メーラトRRTS回廊を視察し、本事業に関連した職業訓練を通じて生計向上を実現した女性たちと面会した。また、グルグラムでは、再生可能エネルギー分野の企業であるReNew社を訪問し、同分野における連携強化について議論した。その後、インフラ、金融、農業、社会分野における企業経営者との円卓会議に参加し、インドの民間セクターが同国の成長推進に必要なスケールと活力を提供できる点を強調した。
ADBは、2023年から2027年までのインド国別支援戦略(CPS)に基づき、年間50億ドルを超える資金支援を行う用意があり、この中には、民間投資を呼び込むための約10億ドル規模の民間部門業務が含まれる。
ADBは1986年にインドでの業務を開始。2025年4月までに、ソブリン融資に595億ドル、民間部門業務に91億ドルをコミットしている。2025年4月時点で、現行のソブリンポートフォリオは81件、総額165億ドルにのぼる。
ADBは、アジア・太平洋地域の持続可能でインクルーシブかつ強靭な成長の促進に向けて取り組む主要な国際開発金融機関である。ADBは、加盟国・地域やパートナーと緊密に連携し、複雑な課題に対応するために革新的な金融手段を駆使し、戦略的パートナーシップを通じて地域の人々の生活向上や質の高いインフラ整備を進めるとともに、地球環境の保護にも貢献している。ADBは1966年に創立され、50の域内加盟国・地域を含め69の加盟国・地域によって構成されている。